ありがたいことに、地元のマンション広報誌にて当店を素敵に特集していただきました。 店名の由来や新聞販売店時代からの歩みなど、当店の原点が丁寧に描かれています。 取材してくださった星川様への感謝を込めて、掲載記事をこちらに紹介いたします。
神明通りに出て、西荻窪駅方面に向かう途中 の左側に、研ぎ小屋「キレット」はある。店頭 の置き看板には、手書きのメッセージが大きな 文字で書かれ、目をひく。
店内を覗くと、職人 兼店主の伊勢真彦さん が、一心不乱に包丁を 研いでいるのが見える。 研ぎ小屋「キレット」 は、山男の伊勢さんが 包丁を中心に「研ぐ」 を専門に、5年前の 2021年3月16日にオー プンした店だ。
キレット、英語っぽい名称だが、れっきとし た日本語。漢字で書くと「切戸」、広辞苑で引 くと「山稜(さんりょう:山頂と山頂を結ぶ高 まりの部分)が、Ⅴ字形に深く切れ込んで低く なっているところ」とある。伊勢さんは、預 かった包丁を「切戸」のようにしてお返しする ことを信条に名付けた店名である。
■きっかけ
伊勢さん、もともとは日本経済新聞の販売店 を練馬区と杉並区で営んでいた。順調に売り上 げを伸ばしていたが、紙媒体での活字離れに、 コロナ禍が拍車をかけ、このまま店を続けてい くことは困難と判断した。
といっても、①何を 自分はしたいか、②何が社会から求められてい るか、そして③何が自分にできるかの3つが揃 わなければ、長続きしないと考えた。
その3つ を知るために、「30分 500円でなんでもやりま す」の新聞のチラシ広告を、新聞に挟んで配っ たところ、「草むしり」、「網戸の張替え」な ど数多くの申し入れがあった。そして実際にお こない、それなりの感触を得ることができた。
しかし、「草むしり」は体力的な問題が、 「網戸の張替え」は、一度張り替えてしまえば、 少なくとも10年はもつことがわかり、一生の 仕事にすることはあきらめた。
そんな中、「包丁研ぎ」の注文が数件あった。 練習を重ねるごとに、上達していくのが分かっ た。一生の仕事にできるかは、腕の上達だけで は分からない。そこで、新聞を配達している家 庭に「包丁」についてのアンケートを行った。
持っている包丁の数は、3本から12本と幅が あったが、切れにくくなった包丁は多くの家庭 で「悩みの種」であることも分かった。
包丁研ぎの需要があることを知ると共に、よ く切れる包丁で、美味しい料理を多くの人に 作ってもらいたいという思いが強くなりネット で調べ、包丁研ぎの達人に出会い、修行を重ね た。
師匠からのお墨付きをもらえた次は店舗探 し。店を決める前に、平日の昼間に神明通りの 人通りを観察し、家で料理をされる主婦が多い ことを確認して開店を今の場所に決めた。
■5年経過
開店後、SNS、チラシなどを通じ、依頼者が 現れ、切れ味の良さが口コミで伝わり、今では 注文が途絶えることのない店になっている。
「店名には、事業を廃業した人生の「谷」から、 もう一度山頂を目指すという意味も込めていま す、今もその山を登り続けている最中です」に 続けて、「お客様の大切な包丁の切れ味を回復 させることで『料理の楽しさを感じてもらえる こと』、『必要としてもらえる事』が一番の喜 び、やりがいと生きがいを感じています」と、 山男である研ぎ職人は、とても嬉しそうに話し てくれた。
