──歩行器を押して来られたご婦人と、一本の包丁研ぎ直しの話
「すみません……包丁研ぎって、こちらでお願いできますか?」
ある日のこと。
店の外から、少し遠慮がちに声をかけてくださったのは、
歩行器を押したご高齢のご婦人でした。
当店は入口に段差があるため、中には入れず、
店外から声をかけてくださったのです。
お話を伺うと――
これまで長年、ご自宅に包丁研ぎに来てくれていた
昔ながらの“出張研ぎ屋さん”が、高齢のため来られなくなってしまったとのこと。
「包丁が切れなくなってしまって…」
「どこに包丁研ぎを頼めばいいのか分からなくて、探していました」
包丁が切れない。
けれど、頼る先が分からない。
今の時代だからこそ、実はとても多いご相談です。
包丁研ぎの内容・料金・日数をご説明すると…
その場で、
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当店の包丁研ぎ直しの内容
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料金
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お預かりから仕上がりまでの日数
をご説明しました。
するとご婦人は、
「それなら、お願いしたいです」
そう言って一度ご自宅に戻られ、
その日のうちに包丁を持って、再び来店してくださいました。
長年使われてきた一本。
簡単に預ける決断ではなかったはずです。
だからこそ、
こちらも自然と背筋が伸びました。
刃先が丸くなった包丁。まず必要だったのは「荒砥」
包丁の状態を確認すると、
切先は丸くなり、刃がほとんど無い状態。
この状態では
中砥石や仕上げ砥石だけでは、切れ味は戻りません。
必要なのは、
刃を作り直すための荒砥(あらと)です。
これは、現場で本当によくあるケースです。
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家庭用砥石(中砥1本)だけで研いでいる
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両面砥石(中砥+仕上げ)しか持っていない
でも包丁の状態を見ると、
実は荒砥が必要な段階ということが少なくありません。
荒砥38分。刃を「一から作り直す」作業
まずは荒砥(150番・220番)で、
丸くなった切先を修正し、刃先のラインを作り直します。
この工程にかかった時間は、38分。
決して派手ではありませんが、
包丁の切れ味を左右する、最も重要な工程です。
その後は、
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400番
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1000番
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2000番
と、番手を上げながら刃先を揃えていきました。
一度仕上げて、もう一度やり直す判断
2000番で一度、試し切り。
すると――
わずかですが、切れ味にムラを感じました。
そこで、
仕上げに進まず、もう一度400番へ戻る判断をしました。
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400
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1000
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2000
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8000
この流れを合計2セット。
全14工程を重ねて、刃先を丁寧に整えました。
合計64分。今年一番のやりがいだった一本
全行程で、64分。
正直、時間も手間もかかりました。
ですが作業中はずっと、
歩行器を押して、わざわざ当店まで来てくださった
ご婦人が喜ぶ顔
それを思い浮かべながら、
一切の妥協なく研ぎ続けました。
最後の試し切り。
包丁は、驚くほど軽く、気持ちよく切れる状態に。
「よく切れる包丁です」
そう胸を張って言える仕上がりになりました。
包丁研ぎは「切れ味」だけでなく、「安心」を預かる仕事
包丁は、ただの道具ではありません。
その人の暮らしを、長年支えてきた存在です。
だからこそ、
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どこに頼めばいいか分からない
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本当に直るのか不安
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買い替えるべきか判断がつかない
そう悩まれる方も少なくありません。
今回の一本は、
当店を信頼して包丁を預けていただけたことが、何よりありがたく、
今年一番の達成感を味わえた仕事となりました。
お渡しする瞬間が、今からとても楽しみです。
包丁の切れ味にお悩みでしたら、
どうぞお気軽に 研ぎ小屋キレット へご相談ください。
包丁の状態を見極め、
研ぎ直し・買い替えの判断も含めて、
一本一本、誠実に向き合っています。
【東京本店・伊勢】

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